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二つのポケット

二つのポケットがあった
一方には 知力・感情その他の
きたないものが入っている
もう一方のポケットには きれいな物が
入っている

ところが人は
人と或いは自然物と出会う時
きたないポケットから物を出して
向かい合う

きれいなポケットの品物は
本当の自分である
本当の自分の歴史である
それを出さずに きたない歴史で
人と自然物と
おつき合いをする

欲の顔がありありと 現れている
知力の顔がありありと 現れている
それが人間の歴史の顔である
人間のDNAの顔である
きれいなポケットを 使わなかった
DNAの顔である

そのきれいなポケットには何が
入っているか
それは「躍動する踊り」であり
純情で素朴なオチャメの顔である
その者にとっては それが その者の
言語であった
神話は太古の人の歴史であり
言語であったと或る学者が言って
いるが
その通りである

純情で素朴で躍動する踊りこそが
神話である
その神話の歴史がきれいなポケットに
つまっているのである