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ナーラーヤン内垣著「神の面相」序文
 アメリカ・UCLA名誉教授(科学者)ドクター・エルドン・クヌス

この序文を書かせて頂くことは、私にとって一つの恩恵であります。 妻と私がドクター・ナーラーヤン内垣師に初めてお会いしたのは、 五年以上前のことでした。

カリフォルニアのウッドランドヒルズにあるヴェーダーンタ・アシュラムへ私達は何度も伺い、 楽しい機会を持って来ました。ことに一九九二年に日本の大阪へ訪問させて頂いたことは、 とても思いで深い体験でした。

そしてソサイティのメンバーの人達が、ドクター・ナーラーヤン師の教えを 彼等の生活の中に実践されているその献身さと調和を、私達は直接目の当たりにして来ました。

この本の第一章で、著者は読者に次のことを気づかせてくれます。 「この社会で私達は、すべてと対立を引き起こすような相互作用を、してしまうことが多いです。 そうでなくワンネス(和合)の精神で相互作用をし合えば、人間関係や国際関係をも、 そのワンネスが調和へと導いてくれます。 (ここでいう調和とは、幾何学的に見つけられる肯定的で創造的なバイブレーションのこと)

彼は「独立宣言」の作成者の叡智である「すべての人は平等に創られている」という主張を もう一度呼び覚まします。彼はその中から「私も人間、あなたも人間」という深い意味を引き出します。 そして荒々しい暴力的な大人の世界を捨てて、子供の無邪気で信頼に満ちた夢の世界を取り入れることの大切さを、 著者は読者に熱心に語りかけます。

それと同時に、聖者になろうと欲する観念と傲慢さへの注意を促します。 又科学者によって発見された、シンボルモデルの宇宙叙述の不完全さを超えていくこと、 そして個人個人が宇宙と調和するよう努めることが大切であると、彼は強調します。

第二章で著者は、哲学を取り扱っています。そこで彼の研究は、神道、仏教、ヒンズー教、 又宗教に関係のない哲学の分野にまで向けられます。

著者はドイツの哲学者であるハイデッガーに影響を受けました。 特に「歴史は明るかった」という捉え方や、又晩年ハイデッガーが、 哲学者から詩人に変容していったことからの影響が大きいのです。

第三章で著者は、詩とは彼が神話と呼ぶところの重要な要素であることを発見しています。 彼はその真に迫った論議の中で「我々が発展と呼ぶものは、ただの混乱にすぎないこと」を 私達読者に気づかせてくれます。神や宗教に頼らない真実の探求について、彼は唱えます。

又真実とは物質的な所有には関係なく、ただ謙遜な和合の精神構造の中にあると 強調します。 (それがトランスペアレント・リアリティ・透明な真実です)そしてこの和合の精神に到達するためには、 時間が必要です。徒弟奉公をする期間や、宇宙との瞑想的な対話が必要です。この和合のシンプルな例は、 蜜蜂の集団や日本庭園の中に見出せます。

そしてこの両方ともカリフォルニアのレディングのヴェーダンタ・アシュラムで開墾され、 深め育まれています。

第三章の最後で著者はまず第一に、読者に次のことを気づかせてくれます。 それは本当の宗教(真実)は、知的な考えや言葉以上のものであるということです。 彼はこの命題を詩人であるエマーソンやホイットマンの中にも見出します。

そして神話は人間と真実を結びつける意識状態であると、明確に定義します。 これはヴェーダーンタ哲学でいえば、マーヤとブラフマンを結びつけるということです。 例えば人は、儀式や神々や文章、詩等のように、その人自身が望むどんな形を使っても 神話を表現出来ます。しかし意味の深い神話を創るためには、高い意識状態 (高いバイブレーション)が必要です。

これらの神話は数世紀に渡り、特にヨーロッパとアジアの哲学者達を魅了してきました。 六人の学者、ビコ、C.G.ハイネ、ヘルダー、シェリング、ギョレス、キャンベルの貢献が、 著者によって手短に述べられています。

そしてドクター・ナーラーヤン師のいくつかの詩の実例が、神話として創造され、この本が完結します。